弁論主義について
1.はじめに
民事訴訟を勉強する方にとって、民事訴訟法は難しい法律の1つです。
民事訴訟法を苦手とする方の多くが、弁論主義の理解につまずきやすい特徴があります。
そこで、民事訴訟において、最も重要な概念である弁論主義についてご説明します。
2.弁論主義とは・・・
裁判は、原告と被告に分かれて、訴訟物に対して、主張や証拠を出し合って、お互いに有利な裁判所の判決を求めます。
そのため、裁判所が訴訟物の存否を判断し、自分の有利な判決を得るためには、自ら証拠を探し、主張しなければなりません。
つまり、弁論主義をわかりやすく説明すると、自分の有利な証拠や主張は、自らが探しなさい、提出しなさいということです。
3.弁論主義の具体的な内容
弁論主義の具体的な内容は、3つです。
① 当事者が主張しない事実は、裁判所はそれを判決の基礎としてはいけない
(第1テーゼ) なお、テーゼとは、「命題、原則」という意味です。
先ほど、弁論主義は自分の有利な証拠や主張は、自らが探しなさい、提出しなさ
いと説明しました。
この「主張」とは、「事実の主張」を示します。
したがって、弁論主義は自分の有利な証拠や主張は、自らが探しなさい、提出し
なさいの反対解釈、弁論主義は、自分の有利な証拠や事実の主張が提出されなけ
れば、裁判所は判断しないということです。
これには、例外がありますが、原則論をまず覚えておきましょう。
② 当事者間に争いのない事実は、裁判所はそれを判決の基礎としなければならない(第2テーゼ)
弁論主義第2テーゼは、自白法則ともいわれています。
民事訴訟法179条においても、「裁判所において当事者が自白した事実及び顕
著な事実は、証明することを要しない。」とあります。
「証明することを要しない」ということは、その前提である「主張」や「証拠」
を提出しなくてよいということです。
先ほど、弁論主義は、自分の有利な証拠や事実の主張が提出されなければ、裁判
所は判断しないとお伝えしましたが、自白した事実や顕著な事実は、この例外にな
ります。
つまり、自白した事実や顕著な事実は、証拠や事実の主張を提出しなくても、当
事者が争わない(認めた)のであるから、民事訴訟の目的である紛争解決に至った
ものとして、裁判所は、判決の基礎としなければならないということです。
③ 当事者間に争いのある事実を証拠によって判断する場合には、事実認定の基礎とな
る証拠は、当事者が申し出たものに限られる(第3テーゼ)
今回は、証拠のお話です。
判決の基礎となる証拠は、裁判所が勝手に調べて判断してはいけません。
必ず当事者が提出した証拠で判断しなさいということです。
これは、当事者の不意打ち防止です。
当事者は、相手方の証拠や主張に対して、否定したり、反論したりします。
いわば、証拠や主張は、相撲の土俵のようなものです。
また、当事者は、自分の有利な判決を得るために証拠や事実の主張をします(弁論主義第1テーゼ)。
なのに、裁判所が勝手に証拠作って、調べることができるのであれば、当事者にとっては、「えっ?そんなの知らないよ。」となりますし、当事者は自分の有利な証拠や事実の主張をする意味すらなくなってしまいます。
4.おわりに
民事訴訟法を勉強するにあたっては、まずは弁論主義をマスターしてください。
この概念が理解できれば、民事訴訟法の理解が格段に広がります。
最近は、代理人を頼まず自分で訴訟を行う方(本人訴訟)も増えています。
民事訴訟を行う際には、民事訴訟法そして弁論主義の理解は欠かせないものとなりますので、是非この機会に学んでいただければと思います。