最低賃金法について
1.はじめに
今年度の最低賃金(時給)について、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機
関)の小委員会は28日、引き上げ額の目安を全国平均で41円と決まりました。
目安通りに改定されれば最低賃金の全国平均は初めて1000円台に達し、現在の961円から1002円となります。
今回中央最低賃金審議会で決定した、各都道府県の引上げ額の目安については、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円です。
仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均が1,002円となり、初めて「全国平均時給1000円を超えた」ということなります。
なお、都道府県の経済実態に応じ、全都道府県をABCの3ランクに分けて、引上げ額の目安を提示している。現在、Aランクで6都府県、Bランクで28道府県、Cランクで13県となっています。
(参考)各都道府県に適用される目安のランク
ランク |
都道府県 |
A |
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 |
B |
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 |
C |
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 |
そこで、今回は、最低賃金についてお話します。
2.最低賃金制度について
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、
その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
仮に、最低賃金額より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、それ
は法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
また、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支
払わなくてはなりません。
3.最低賃金の対象
最低賃金法の対象は、時間給つまり「時給」です。
労働者に支給される金銭等は様々ですが、最低賃金の対象は、労働者に対して「1
か月ごとに支払われる基本給」のみです。
4.最低賃金の種類
最低賃金の種類としては、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」があ
ります。
⑴ 「地域別最低賃金」
地域別最低賃金は各都道府県につき1つの金額が定められており、産業や職種に
かかわりなくそのエリアの事業所すべてに適用されます。
また、最低賃金は正社員だけでなく契約社員や派遣社員、臨時や嘱託の職員、パ
ートやアルバイトなど、あらゆる雇用形態に適用されます。
地域別最低賃金には、すべての労働者の最低限の生活を保証するセーフティーネ
ットの意味合いがあり、日本国憲法で定められている健康的で文化的な最低限度の
生活を、すべての労働者が営むことができるよう配慮されています。
最低賃金は、国内の最低賃金を総括する中央最低賃金審議会という機関で毎年、
地方最低賃金審議会に対して最低賃金額改訂のための目安を提示し、地方最低賃金
審議会はこの目安や地域の実情を加味し、最低賃金の具体的な金額を決定していき
ます。
「1.はじめに」に掲載した記事にも「中央最低賃金審議会」が時給を決定したと
ありますが、これは、地方最低賃金審議会に対して最低賃金額改訂のための目安を
提示するという意味合いがあります。
ただ、実際には、今後各地方最低賃金審議会で、目安の提示を参考にしつつ、賃
金の実態調査や参考人の意見等も踏まえたうえで、各党道府県労働局長が地域別最
低賃金を決定することになります。
⑵ 「特定(産業別)最低賃金」
特定の産業に対して定められた最低賃金は特定(産業別)最低賃金といいます。
業種によっては、地域別最低賃金よりも高い水準の最低賃金を定めなければ、従
事する労働者が不合理な扱いをうける可能性があります。
そこで、特定の業種に従事する人が損をせず働けるよう、厚生労働省は関係労使
の申し出に基づいて特定最低賃金の調査や審議をおこなっています。
特定最低賃金は、製造業や鉄鋼業、特定の商品を販売する小売業などの特定の業
種に対して定められます。
なお、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、より
高い方の最低賃金額を支払うことになります。
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法による罰則(5
0万円以下の罰金)が定められ、
特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法による
罰則(30万円以下の罰金)が適用されます。
5.最低賃金法の例外適用について
労働者を雇用するときには、原則としては地域別最低賃金以上の給与を支払わなけ
ればなりません。
ただし、特定の状況によっては最低賃金を個別に減額して雇用をおこなうことが可
能な場合もあります。
地域別最低賃金の適用外になる人には以下のような条件があります。
- 精神・身体の障害によって労働能力が著しく低い
- 試用期間中である
- 認定職業訓練を受けており、厚生労働省令で定められている一部の労働者
- 軽易な業務に従事している
- 実作業時間が少ない断続的労働に従事している
また、特定最低賃金の適用外になる場合は以下の通りです。
- 18歳未満または65歳以上である
- 雇入後一定期間を経過しておらず技能を習得中である
- 該当する業種に特有の軽易な業務に従事している
これらの条件に該当する方に関しては、最低賃金を適用すると雇用の機会を失ってしまう可能性があります。
あらゆる人が社会で活躍できるよう、また人材を育てる目的から、地域別最低賃金または特定最低賃金の減額の特例が認められる場合があります。
6.おわりに
最低賃金は、企業として最低限守らなければならない約束事です。
物価が高まる中で、企業としても人件費の高まりは悩みの種であると思います。
それでも、労働者の生活を守るためには、全国平均時給1000円以上が求められ
る時代となりました。
企業としても、労働者に労働の対価である賃金を支払えるよう、効率的な収益を得
られるようさらに改善していく必要があります。