年収の壁

1.はじめに

  政府の検討案によりますと、現在所得課税の対象となっている年収103万円や配

 偶者控除の年収150万円について廃止を含めた検討にはいっているとのことです。

  この年収103万円や年収201万円の壁とはどのような制度なのでしょうか。

2.壁の対象

  年収103万円~201万円の壁に関する対象は、

 大きく分けて

 ① 全ての人を対象

 ② 一部の労働者を対象

 ③ 配偶者

 を対象とするものに分かれます。

 

 ① 全ての人を対象  :103万円の壁、130万円の壁

 ➁ 一部の労働者を対象:106万円の壁

 ③ 配偶者を対象   :103万円の壁、150万円の壁、201万円の壁

   

3.年収103万円の壁

  年収103万円の壁とは、103万円を超えた分に対してかかる税金(所得税)で

 す。
  例えば、年収が104万円の場合、103万円を超える1万円に対してかかる所得税は年 

 間500円となります。

  このくらいの金額では問題ないように思えますが、夫が会社から配偶者手当の支給を受けている場合は注意が必要です。
  多くの会社で配偶者手当の上限を103万円に設定しているので、年収103万円を超えるとこの配偶者手当がもらえなくなります。
 配偶者手当は全国平均で約17,000円です。

 つまり、年収103万円を超えてしまうと、配偶者控除として、年間約20万円もらえるものがもらえなくなってしまい、目減りしてしまうということです。

 

4.年収106万円の壁

  年収106万円の壁とは、社会保険に加入する義務が生じるという意味です。

 社会保険とは、具体的には、厚生年金・健康保険です。

  厚生年金や健康保険に加入することで、月収の約15%は減収となります。

  厚生年金は、従業員が101人以上、2か月以上の雇用見込みがある場合には、年

 収106万円から控除対象になります。

  つまり、年収106万円を超えてしまうと、社会保険控除として、年収の約15%が控除され、目減りしてしまうということです。

 

5.年収130万円の壁 

 これも社会保険に関する加入義務のことです。

 年収130万円を超えると、全ての労働者(従業員数、雇用期間を問わない)を対象として、社会保険控除が生じます。

 

6.年収150万円~年収201万円の壁

  年収150万円の壁とは、配偶者控除の対象額が年収150万円を超えると、減少 

 することを意味します。

  配偶者控除は最大38万円ですが、この配偶者控除を受けることで、夫の所得税が減

 って実質的に夫の手取り金額が増える=世帯の収入が増えるということになります。
  配偶者控除の減少額は、年収150万円からスタートします。

  つまり、妻の年収が150万円を超えるまでは、38万円の控除を受けられます

 が、150万円を超えると徐々に控除が少なくなり、年収201万円を超えると、配

 偶者控除は受けられなくなるということです。

7.結論

  ⑴ 独身の方であれば・・・

   年収130万円を超えると、社会保険控除の対象になるので、

   年収130万円を超えるかが1つの目安になるでしょう。

  ⑵ 配偶者の方であれば・・・

   今後の将来の家計のためを考える際には、年収の壁による一時的な手取り収入  

   の減少にこだわり過ぎず、年収150万円以上を目指すことが重要です。

    ただ、パートタイムで働く方々ですと、

   年収150万円=月12.5万円=時給1250円だと月100時間

   月100時間=8時間労働なら13日以上、6時間労働であれば、17日

   以上勤務する必要があります。

 

   まずは、ご自身のライフスタイルにあった働き方が重要です。

   そのうえで、ご自身が望む働き方に、所得控除と年収が関係していることをチェ   

   ックしながら、自分のライフスタイルに合わせて、働く時間や働くスタイルを工  

   夫していくことが重要であると思います。