タレント出演に関する諸問題

 タレントさんにとって、売れるためにはテレビやCM、映画などに出演することが第一です。

 では、タレントさんがテレビやCM、映画に出演する際には、どのような点に気を配る必要があるでしょうか?

 

 1.タレントさんの出演料(以下「ギャラ」とします。)の決め方

 一般論としては、タレントのギャラは、映画→テレビ(地上波→衛星)→配信の順位

に高くなっていると言われています。

(当然ながら、タレントさんの主戦場やメディアでの活躍度合いにより変わることがあります。)

 映画は、基本的には出演は1度きりで、ギャラの支払いも1回であるため、比較的高額になっています。

 配信については、最近では高額になってきましたが、まだまだテレビに比べると低い番組が多い傾向にあります。

 芸能事務所とのギャラの決め方も多種多様です。

 

 一つは、月額固定報酬です。

 若手で出演が少ない育成タレントに多いパターンです。

 芸能事務所が寮費やレッスン料を負担する代わりに毎月定額でのギャラを支払う仕組みです。

 タレントさんの生活を確保するためも、まずは「固定」で契約する場合があります。

 

 二つ目は、個別に固定報酬を設定する方法です。

 例えば、1舞台の出演料を定めるものです。

 一本いくらという決め方です。

 役者さんや劇場の芸人さんに多い定め方です。

 契約内容も明瞭でトラブルも比較的少ないのですが、ギャラの低さが特徴です。

 

 三つ目は、歩合給です。

 出演料の〇%を差し引いてタレントに支払うというケースです。

 出演料には、書籍やCD、カラオケ利用の印税も含まれます。

 歩合の割合は、タレント(アーティスト)さんの人気・プロダクションとの力関係等により変わってきますが、CMなどプロダクションの成果による制作物の場合には、一般的に歩合は低めに設定されています。

 

 

 
2.映画・テレビ番組の2次利用について

 タレントさんは、映画に出演した場合、著作権法91条1項によって録音・録画の権利を専有していますので、タレントさんが映画に出演する際には、映画に関して録音・録画許諾に関する契約を締結します。

ただし、「映画の著作物」に関しては、権利を有しないものとされています(同条2項)。

つまり、タレントさんは映画に関する録音・録画許諾に関する契約を締結しても、映画のDVDに関しては、及ばない(タレントさんの許可なく複製できる)ことになります。

その後の、映画のDVDの売り上げに関しても、特段契約を結ばなければ、ギャラは得られないことになります。

→映画出演時に、契約書の内容にDVDなどの著作物のギャラが入っているかきちんと確認する必要があります。

 

 テレビ番組の場合は、「映画の著作物」ではないのですが、通常は、タレントさんが出演した際に、二次利用に関する許諾を得ることが多くなっています。

 ただ、許諾料に関しては、二次利用による影響(再ブームになって、あちらこちらで過去のテレビ番組が放映された場合)を踏まえて、それなりの・・・ギャラを求めることができる(別途交渉により決まることが多いです。 )

 タレントさんとしても、目先の出演を急ぐあまり、契約書(許諾書)に二次利用の記載がなされていなかったため、ギャラが発生しなかった・・・

とならないよう、契約書を残しておくこと、契約の内容を確認することが必要です。

 

3.タレントさんの移籍に関する問題

 タレントさんとプロダクションとの契約は、長くても5年程度です。

 タレントさんが当初よりも、人気になった際に、必ず問題になるのが、移籍の問題です。

 映画やテレビ番組の二次利用は、10年、20年といった長いスパンで生じることもあります。

 その場合の、権利の所在やギャラの設定に関して問題が生じることがあります。

 多くのタレント契約書には、移籍の関するペナルティーや移籍した場合の権利関係が記載されています。

 

 その中では、権利・許諾関係に関し、契約当事者たるプロダクションが専属期間後も契約上の地位を存続するか、新しいプロダクション(あるいはタレント本人) が契約上の地位を承継するかという選択制になっていることが多いように思いますが、予め契約内容を確認する必要があります。

 

4.反社会的勢力排除及び不祥事に関する項目

 最近の不祥事のなかには、反社会的勢力との関係が暴かれ、プロダクションとの契約が解除されたケースや麻薬・覚せい剤その他犯罪行為により契約解除されたケース、不倫や別の異性との交際が発覚したことで、タレントとしての価値を落とし、契約解除に至ったケースもあります。

 このようないわゆる不祥事に関しては、社会的な影響も大きく、プロダクションの信用を毀損し、他の所属タレントの価値も下落させてしまうことになりかねません。

 

 そのため、最近のタレント契約書には、反社会的勢力とは関わらない、犯罪は犯さない、社会的不祥事はしないことを誓約させ、誓約に反した場合は、契約の解除だけでなく、法的措置を行うなどが記載されているケースが多くなっています。

→タレントさんも、このような行為を起こさないことが重要ですが、

 その前に・・・とても重要なことですから、

 「自分には関係がない」と思うのではなく、

 必ず、プロダクションから反社勢力との関わりの危険性や犯罪行為を行った際の契約の動向などを説明を受けて下さいね。

 

 

 当事務所では、タレントさん(子役さんも歓迎)からの契約関係に関する問題を広く受け付けています。

 もし、出演契約・タレント契約に関して、契約内容やプロダクションの対応に疑問がありましたら、お気軽にご相談下さい。