処分権主義について

1.はじめに

   前回、民事訴訟法において重要な概念である弁論主義をお伝えしました。

  民事訴訟法には、もう1つ重要な概念があります。

  それが、処分権主義です。

  今回は、処分権主義についてお伝えします。

 

2.処分権主義とは・・・

  処分権主義とは、民事訴訟の当事者に、訴訟の開始、審判対象の特定やその範囲の 

 限定、判決によらずに終了させる権能を認める建前のことです。

  処分権主義は、私的な利益について、自らが訴えるかどうか、何を訴えるか、訴訟 

 という形で終わらせるかは、原告の自由な意思により決定できるという意味です。

 

3.訴訟制度と処分権主義の具体的な内容

  処分権主義の具体的内容としては、以下のものがあります。

 ① 訴訟の開始の段階

   民事訴訟は、当事者の訴えをまってはじめて開始されます。

   いつ、訴えるかは、原告の自由です。

   (ただし、実体法上の時効の問題があります。)

 ②審判対象特定提示について

   当事者(原告)は、訴えにおいて、どのような裁判を求めるのか(対象、範囲、

  審判形式など)を明示することを要し、裁判所はこれに拘束されます(民事訴訟

  246条)。

   原告は訴状の当事者欄(民事訴訟法133条2項1号)において誰を当事者とするの

  か決めることができます。

   また、訴状の請求の趣旨及び原因(民事訴訟法133条2項2号)において、いかな

  る権利関係か、給付・確認・形成のいずれの訴えの形式か、複数請求訴訟・共同訴

  訟を提起するか否かを選択することができます。

 

 ③訴訟の終了の段階

   当事者は、その意思によって(終局)判決によらずに訴訟手続を終了させること

  ができます。

   判決に至らずに事件を終了させる方法としては、訴えの取下げ(民事訴訟法261

  条、262条)、訴訟上の和解(民事訴訟法267条)、請求の放棄・請求の認諾(民事

  訴訟法266条)などがあります。

 

4.処分権主義の機能

   処分権主義によって、裁判所、被告にとっても利点があります。

 ① 原告から呈示された訴訟物からにより審理の範囲が確定しますので、裁判所にと

  って審理の集中化を図ることができます。

 ② 被告にとっても、防御の目標を提示する手続保障の役割をもつことになりますの 

  で、原告の提示した訴訟物に対して、防御の範囲が特定できる利点があります。

 

5.処分権主義の例外

  その一方で、処分権主義が排除される場合があります。

  処分権主義が個人の私的自治の貫徹を図ることにありますので、個人の私的自治

 範囲を超える問題つまり問題となる法律関係が個人的利益を超え、公益あるいは一般

 的利益に関するものである場合には、処分権主義は排除(または制限)されます。  

  具体的には、人事訴訟事件(婚姻、養子縁組など)、会社訴訟事件(株主総会決議

 取消訴訟など)において、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解が認められない場合があ

 ります(人事訴訟法19条2項、37条、44条)。土地の境界確定訴訟においても、公的

 な判断を行う必要がある場合には、処分権主義が排除される場面があります。

 

6.処分権主義が問題になるケース

  処分権主義が問題になるケースとして、債務不存在確認の訴えで原告自認の債務を

 下回る認定した場合があります。

  原告が被告に対して、1000万円の貸金返還請求をしました。

  被告は、300万円は弁済したと主張し、これが認められると、原告は被告に70

 0万円を支払えという判決になります。

  では、原告が被告に対して1000万円の貸金返還債務のうち、200万円を超え

 て債務は存在しないという旨の債務不存在確認訴訟をした場合に、裁判所は、「10

 0万円を超えて債務が存在しない」と判決できるでしょうか。

  民事訴訟法では、「当事者の申し立てていない事項について判決をすることができ

 ない(民事訴訟法246条)」と定めています。

  今回の訴訟物は、「200万円を超えて債務が存在しないか」ですから、「200

 万円以下の債務」に関して原告は判断を求めていません。

  そのため、裁判所は、(200万円以下である)「100万円を超えて債務が存在

 しない」との判決することは、246条違反となり、違法となります。

 

7.さいごに

  処分権主義が問題となった判例はたくさんありますが、判例を学ぶ際に必要なこと 

 は、概念や制度の趣旨です。

  処分権主義の趣旨は、私的自治の貫徹であり、裁判所は、原告の自由な意思を尊重

 しつつ、判決という形で裁断する必要があります。

  原告の自由な意思に反して、裁判所の判断により判決をすることは、慎まなければ

 ならないということです。

  処分権主義は、少し難しい概念ですが、是非ともマスターしてみて下さい。

弁論主義について

1.はじめに

 民事訴訟を勉強する方にとって、民事訴訟法は難しい法律の1つです。

 民事訴訟法を苦手とする方の多くが、弁論主義の理解につまずきやすい特徴があります。

 そこで、民事訴訟において、最も重要な概念である弁論主義についてご説明します。

 

2.弁論主義とは・・・

 裁判は、原告と被告に分かれて、訴訟物に対して、主張や証拠を出し合って、お互いに有利な裁判所の判決を求めます。

 そのため、裁判所が訴訟物の存否を判断し、自分の有利な判決を得るためには、自ら証拠を探し、主張しなければなりません。

 つまり、弁論主義をわかりやすく説明すると、自分の有利な証拠や主張は、自らが探しなさい、提出しなさいということです。

 

3.弁論主義の具体的な内容

 弁論主義の具体的な内容は、3つです。

 ① 当事者が主張しない事実は、裁判所はそれを判決の基礎としてはいけない

  (第1テーゼ) なお、テーゼとは、「命題、原則」という意味です。

 

   先ほど、弁論主義は自分の有利な証拠や主張は、自らが探しなさい、提出しなさ  

  いと説明しました。

   この「主張」とは、「事実の主張」を示します。

 

   したがって、弁論主義は自分の有利な証拠や主張は、自らが探しなさい、提出し 

  なさいの反対解釈、弁論主義は、自分の有利な証拠や事実の主張が提出されなけ

  れば、裁判所は判断しないということです。

   これには、例外がありますが、原則論をまず覚えておきましょう。

 

 ② 当事者間に争いのない事実は、裁判所はそれを判決の基礎としなければならない(第2テーゼ)

 

   弁論主義第2テーゼは、自白法則ともいわれています。

   民事訴訟法179条においても、「裁判所において当事者が自白した事実及び顕 

  著な事実は、証明することを要しない。」とあります。

   「証明することを要しない」ということは、その前提である「主張」や「証拠」 

  を提出しなくてよいということです。

   先ほど、弁論主義は、自分の有利な証拠や事実の主張が提出されなければ、裁判

  所は判断しないとお伝えしましたが、自白した事実や顕著な事実は、この例外にな 

  ります。

   つまり、自白した事実や顕著な事実は、証拠や事実の主張を提出しなくても、当

  事者が争わない(認めた)のであるから、民事訴訟の目的である紛争解決に至った

  ものとして、裁判所は、判決の基礎としなければならないということです。

 

③ 当事者間に争いのある事実を証拠によって判断する場合には、事実認定の基礎とな

 る証拠は、当事者が申し出たものに限られる(第3テーゼ)

 

  今回は、証拠のお話です。

  判決の基礎となる証拠は、裁判所が勝手に調べて判断してはいけません。

  必ず当事者が提出した証拠で判断しなさいということです。

  これは、当事者の不意打ち防止です。

  当事者は、相手方の証拠や主張に対して、否定したり、反論したりします。

  いわば、証拠や主張は、相撲の土俵のようなものです。

  また、当事者は、自分の有利な判決を得るために証拠や事実の主張をします(弁論主義第1テーゼ)。

  なのに、裁判所が勝手に証拠作って、調べることができるのであれば、当事者にとっては、「えっ?そんなの知らないよ。」となりますし、当事者は自分の有利な証拠や事実の主張をする意味すらなくなってしまいます。

 

4.おわりに

  民事訴訟法を勉強するにあたっては、まずは弁論主義をマスターしてください。

  この概念が理解できれば、民事訴訟法の理解が格段に広がります。

  最近は、代理人を頼まず自分で訴訟を行う方(本人訴訟)も増えています。

  民事訴訟を行う際には、民事訴訟法そして弁論主義の理解は欠かせないものとなりますので、是非この機会に学んでいただければと思います。

 

東京都の「HTT運動」について

1.はじめに

この夏も非常に暑い夏になってきまた。

東京都では、エネルギーの安定供給と温暖化対策を実現するため「HTT運動」を行っています。

今回は、東京都の「HTT運動」をご説明します。

 

2.HTT運動とは・・・

HTT運動とは、東京都が、2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減するカーボンハーフ目標を実現するために、気候危機への対応だけでなく、中長期的にエネルギーの安定確保につなげるためのキーワードとして行う取組のことをいいます。

「HTT」とは、具体的には、電力をH「へらす」T「つくる」T「ためる」ことです。

電力使用量を減らし、エネルギーを効率的に利用し、サスティナブルな都市を創ることを目指しています。

 

3.HTT運動の目的

HTT運動の目的は、企業がより効率的に電力を使用し、電力需要と供給のバランスをとること、再生可能エネルギーの導入によって、地球環境への負荷を減らすことで、エネルギーの安定化と温暖化対策を実現することが目的です。

つまり、節電、省エネ、再生可能エネルギーによるCO2排出削減に対する企業の取り組みを支援することで、エネルギーの安定化と温暖化対策を同時に実現しようという試みです。

HTT運動の対象は東京都内の中小企業、小規模事業者です。

当該企業に補助金を交付したり、節電を求めることを目的としています。

 

4.「H」電気を減らすこと

 電気を減らすためには、より電気を少なく消費する設備投資が一番効率的です。

 そこで、LED照明、省エネエアコン、室温を変えずに換気できる設備、高効率ボイラー、断熱窓、高効率変圧器、省エネ冷凍冷蔵設備、高効率コンプレッサ、人感センサーなどの省エネ、節電に関する企業の設備投資には、東京都から助成率2/3 限度額2,500万円の助成金が出ます。

 また、データの効率化、仕事の効率化を実現するためのDX化の導入の際には、東京都が助成率1/2 限度額300万円の助成金が出ます。

 他にも、自社Webサイトの製作費や新製品のチラシ・カタログ作成、PR広告掲載等の費用にも東京都から助成率2/3 限度額20万円で助成金が出ます。

5.「T」電力を作る

 電気を作るためには、再生可能エネルギーを利用するのが効率的です。

 再生可能エネルギーとしては、太陽光、水素を利用したエネルギー開発が有効です。

 そこで、太陽光エネルギーや水素エネルギーの実現のための設備投資として、東京都から補助金が出ます。

 

6.「T」電力を貯める

 電気を貯めるためには、蓄電池やEVなどの蓄電装置が必要です。

 そこで、蓄電装置やEVの購入の際に、東京都から補助金が出ます。

 

7.最後に

 東京都のHTT運動は、東京都にある中小企業や小規模事業者を対象としていますが、かなり充実した補助金が出ますので、東京都の中小企業の方々にとっては、利用価値がある制度であると思います。

 

 補助金を利用しつつ、省エネができ、地球環境に配慮した試みが広がることで、よりサスティナブルな社会になればいいですね。

 

参考:https://www.httnavi.metro.tokyo.lg.jp/

   https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/tokyo_coolhome_coolbiz/index.html

   https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/important/htt.html

   https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kiban/shisaku/htt.html

 

SNSでのチケットの売買は気を付けて!

1.はじめに

  ご相談の内容で、SNSで知り合った人とのチケットのトラブルが増えています。

  人気ミュージシャンのチケットが買えなかったので、SNSで「10万円で売りま 

 す」とあったので10万円を払ったが、チケットは来なかった・・というものです。

  今回は、SNSでチケット売買を行う危険についてお伝えします。

 

2.メルカリやSNSの存在

  SNSでチケット販売が多く行われる背景として、メルカリなどのフリマサイトの存

 在があります。

  物を自由に売り買いできることに慣れていると、チケットだって、自由に売り買い

 してもいいと考えるのは、むしろ自然かもしれませんね。

  特に、若い方は、SNSが子供の頃から身近にあり、生活の一部となっていることも

 あるかもしれません。

  子供の頃からスマホを利用し、自由に様々な人と交流できることで警戒感が少なくなっているかもしれません。

 

3.迷惑防止条例違反(ダフ屋行為)

  従来、チケットの転売は、「ダフ屋行為」として各都道府県の迷惑防止条例で取り

 締られてきました。

  ダフ屋行為とは、「転売する目的でチケットを購入したり、会場周辺でチケットを

 転売したりする」ことです。

  インターネットにおいて誰もが容易にチケットを転売できるようになりましたが、

 インターネット上での売買は、迷惑防止条例で取り締まることのできる「公共の場所 

 又は公共の乗り物」での売買に該当しません。

  そのため、そういった「ダフ屋行為」に加え、インターネット上でのチケットの不
 当な高額転売等を禁止するため2019年6月14日にチケット不正転売禁止法が施

 行されました。

 

4.チケット不正転売禁止法

  これは、政府広報が作成した注意喚起です。

  https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201904/1.html

  チケット不正転売禁止法(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興

 行入場券の適正な流通の確保に関する法律(2019年6月14日施行))では、

 チケットの不正転売をした場合、不正転売を目的としてチケットを譲り受ける場合、

 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またその両方が課されます

 つまり、SNSを問わず、不正転売は違法です!

 チケット不正転売禁止法で禁止している行為は、

  • 特定興行入場券(チケット)を不正転売すること
  • 特定興行入場券(チケット)の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けること

 の2つです。

 

5.特定興行入場券とは・・・

  チケット不正転売禁止法の対象は、特定興行入場券です。

  特定興行入場券とは、
  「不特定または多数の者に販売され、かつ、次の1から3のいずれにも該当する芸

 術・芸能やスポーツイベントなどのチケット」をいいます。

 ※日本国内において行われるものに限られます。

  1. 販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、その旨が券面(電子チケットは映像面)に記載されていること。
  2. 興行の日時・場所、座席(または入場資格者)が指定されたものであること。
  3. 例えば、座席が指定されている場合、購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)を確認する措置が講じられており、その旨が券面に記載されていること

   →日付指定がないチケット

    転売禁止の記載がないチケット

    販売時に本人確認を求めないチケットは、適用されません。

    →美術館の招待チケットなどが該当します。

 →たとえばライブでは、会場ごとに決まった座席数しか用意できませんから、チケッ  

  トを販売できるキャパシティーは限られています。

  他方、商品の場合、供給する側が供給量を増やすことも可能です。

  このような意味で、チケットは転売を規制する必要性が大きいと言えます。

 

6.不正転売とは・・・

  不正転売とは、「興行主に事前の同意を得ずに反復継続の意思をもって行う有償譲

 渡であって、興行主等の販売価格を超える価格で特定興行入場券を転売すること」を

 いいます。

→⑴ 興行主に事前の同意を得ずに

   チケット会社(チケットぴあ等)では、そのチケットを希望する方へ転売できる

  サービスを提供している正規(公式)のリセールサイトがあります。リセールサイ

  トは、興行主の同意を有しているので、適法です。 

 ⑵ 反復継続の意思を持って

   病気で行くことができない、他の用事で参加できないなど、単発での譲渡であれ

  ば、不正転売になりません。

 ⑶ 興行主等の販売価格を超える価格

   興行主等の販売価格よりも同等もしくは低額なら、不正転売には当たりません。

 

7.SNSでの特徴

  SNSでは、相手方の連絡手段が限られ、特定が難しい特徴があります。

  そのため、泣き寝入りをしてしまう方が非常に多く、警察による摘発が難しい事件

 でもあります。

  チケットを売るほうも、顔や素性が分からないため、抵抗感がなく不正転売ができ

 てしまい、「反復継続する意思」は、外形上では全くわかりません。

 

8.最後に

  不正転売の要件である「反復継続する意思」は撤廃し、興行主の販売価格よりも高

 額であれば、不正転売であるとすべきです。

  チケットは、正規の代理店で購入しましょう。

  個人から譲り受けること自体は、違法ではありません。

  ただ、違法行為に加担する可能性がある行為であること、トラブルに巻き込まれる

 ことのリスクがあることを十分理解してください。

  実際にも、表示価格の10倍以上の価格で買わせたうえで、チケットが届かないと

 いったトラブルも発生しています。

  SNSでのチケットの売買はしない、

  どうしても売買を行う必要がある場合には、「チケット不正転売禁止法」を十分に

 理解した上で、取引してくださいね!

プライバシー・バイ・デザイン(PbD)とマイナンバー制度

1.はじめに

  個人情報やプライバシーなど「個人に関する情報」をみだりに第三者に開示又は公 

 開されない自由は,憲法13条により認められています。

  (住基ネット最高裁判決=最判平20.3.6民集62-3-665。)

  また、個人の人格権たるプライバシーは,公共の福祉に反しない限り,最大の尊重

 を必要されます。

 

   日本でも個人情報保護の機運が高まり、現在、マイナンバーカードの管理の在り

 方」が問われています。

  個人情報やプライバシーは、憲法13条に含まれる一度流出すると取り返しがつか

 ない最も重要な情報です。

  それ故、プライバシー保護の設計をシステム化して、より強固な設計の下、保護を

 図る必要があります。

 

  プライバシー・バイ・デザイン(PbD)とは、

 プライバシー保護の設計をシステム化して、より強固な設計の下、保護を図ること

 ですが、日本ではほとんど知られていません。

 

  そこで、今回は、プライバシー・バイ・デザイン(PbD)についてご説明します。

 

2.プライバシー・バイ・デザイン(PbD)の提唱

  プライバシー・バイ・デザイン(PbD)という言葉は、1990年の後半にカナ

 ダで開催された国際会議の際に、カナダ、オンタリオ州の情報プライバシーコミッシ

 ョナー、アン・カブキアン博士によって提唱されました。

  アン・カブキアン博士は、カナダ・トロントで進むスマートシティ計画における 

 Alphabet傘下の私企業「Sidewalk Labs」のデータの取り扱いにPbDの観点から懸念を

 覚え、要職を辞任されたときから、プライバシー・バイ・デザイン(PbD)の研究を

 始めるようになったとのことです。

  日本でも、トヨタ自動車が、静岡県裾野市にスマートシティ(ウーブンシティ)を

 建設中です。

   https://www.woven-city.global/jpn

 

  スマートシティを始めるにあたっては、IT技術は欠かせませんが、その際のプラ

 イバシー・個人情報保護をいかにしてシステムに組み、いかにして強固な体制を構築

 するかがプライバシー・バイ・デザイン(PbD)が提起する問題点です。

 

3.プライバシー・バイ・デザイン(PbD)の7つの原則

  アン・カブキアン博士は、プライバシー・バイ・デザイン(PbD)を提唱するにあ

 たり、7つの原則を提唱しています。

【1】事後的ではなく、事前的:救済的でなく予防的
【2】初期設定としてのプライバシー
【3】デザインに組み込まれるプライバシー
【4】全機能的:ゼロサムではなく、ポジティブサム
【5】最初から最後までのセキュリティ:すべてのライフサイクルを保護
【6】可視性と透明性:公開の維持
【7】利用者のプライバシーの尊重:利用者中心主義を維持する

https://www.soumu.go.jp/main_content/000196322.pdf

 

4.7つの原則の内容

  7つの原則の全てをご紹介すると、1冊の本にできるくらい長くなってしまいます

 ので、要点を絞ってお伝えします。

 

  プライバシー・バイ・デザイン(PbD) のアプローチは、受け身で対応するというよ

 り、むしろ先見的に対応することが特徴です。

マイナンバー制度は、国民からの批判を受け、右往左往している気がします・・・)

 

  プライバシー侵害が発生する前に、それを予想し、予防することを目的に、事前に

 強固なシステム構築で、情報流出をさせないシステム作りを行うこと。

 

  個人が個別の措置を行うのではなく、組織がプライバシー・個人情報に関するシス

 テム構築を行うこと

 (マイナンバーは、取得者が申請しなければならず、とても面倒でした・・・)

 

  プライバシーや個人情報は、ITシステムおよびビジネス・プラクティスのデザインおよび構造に組み込まれるものであり、事後的に、付加機能として追加するものではない。システム開発の当初から、当然に組み込むものである。

マイナンバー制度のように、システム開発の途中に個人情報を入力することはあってはならないと提唱しています。) 

 

 プライバシー・バイ・デザイン(PbD)は、「ウイン-ウイン」の方法で、すべての正当な利益および目標を収めることを目指し、プライバシーとセキュリティの両方とも持つことが可能であることを理念としています。

 (マイナンバーの杜撰な管理から、政府は国民に対してプライバシー管理に対する大きな不安を与えています。)

 

 プライバシー・バイ・デザイン(PbD)は、情報の安全なライフサイクル管理を、「揺りかごから墓場まで」、終始、全ライフサイクルにわたって確保している

(残念ながら、マイナンバーは国民全員に普及していません・・・)

 

 その構成部分および機能は、利用者および提供者に一様に、可視的で透明でありつづける。 記憶し、信頼するが、検証すべきである

マイナンバーの杜撰な管理につき、政府は正面から課題を検討し、国民に公表すべきです。)

 

 利用者および管理者に対し、強力なプライバシー標準、適切な通知、 および権限付与の簡単なオプションのような手段を提供することによって、個人の利益を最大限に維持することを求めている。利用者中心主義を維持すべきである。

(現状のマイナンバー制度では、利用者にはあまりメリットがありません。

 残念ながら、政府中心主義と言わざるを得ないでしょう。)

 

5.おわりに

  今から30年以上前にアン・カブキアン博士によって提唱されたプライバシー・バ 

 イ・デザイン(PbD)の概念は、残念ながら現在のマイナンバー制度には全く活用

 できていません。

  マイナンバー制度は、国民の「ゆりかごから墓場まで」の膨大な個人情報を管理し

 続けます。

  政府も現状のマイナンバーの仕組みに関する問題点を積極的に公表したうえで、

 より高度なシステム作りを構築できるよう様々な意見を聞き、柔軟に取り入れるべき

 です。

  マイナンバー制度のシステムは、富士通ジャパンが行っていることは、公表されて

 いますが、より高度なシステム構築ができるよう、活発な意見が交換できる場を設定

 し、今こそプライバシー・バイ・デザイン(PbD)の概念を取り入れることが必要

 であると思います。

https://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/public-sector/local-

親の教育・監護権と懲戒権

1.はじめに

  子供を持つ親が、子供に対して「しつけ」と称して、体罰を与え、悲劇的な結末を 

 招く事件が絶えず発生しています。

  行政も、児相(児童相談所)と連携して、不幸は出来事を減らすよう改善していま

 すが、未だに事件が生じてしまいます。

  このような事件を減らすためには、どのように考えればよいのでしょうか。

 

2.民法上の懲戒権

  親は、子供に対して、監護し、教育する義務があります(民法820条)。

  そのため、親は、子に対して、監護し、教育する範囲で懲罰することはできます(民法822条)。

  重要なのは、親の懲戒権は監護し、教育する範囲に限定されている点です。

  あくまで、子を監護し、教育するための(最低限の)範囲での懲戒権の行使ができ

 るということです。

  それは、子供と児童の権利条約のなかで「児童が、その人格の完全なかつ調和のと

 れた発達のため、家庭環境のもとで幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長する

 べきである」という文言がある以上、家庭の中では、児童に対して、幸福、愛情及び
 理解のある雰囲気の下で初めて監護し、教育することが前提となっているのです。

 

3.懲戒権を超えた行為は、体罰です。

  親が子に対して。懲戒権を超えた体罰は、「児童虐待」です。

  刑法上の暴行罪・傷害罪の対象となり、親権停止の考慮要素となります。また、都 

 道府県児童養護施設への入所措置の対象となります。

 

4.言葉や身体に対する暴力がなくとも、教育はできます。

  日本では、子が親の話すことに対して、反抗したり、逆らったりしたとき、身体的

 な制裁や厳しい言葉を浴びせないと、わがままに育ってしまう、社会に適応できない 

 と思ってしまう傾向があります。

  しかしながら、そのようなことはありません。

  子がしてはならないことを自ら考えさせ、学ばせることが重要なのです。

  時には、厳しく教育することも必要かもしれません。

  ただ、身体的・精神的な苦痛を与えてまで、親の言うことに従わせる必要はあるの

 でしょうか。

 

5.暴力をふるう親の心理

  https://blog.counselor.or.jp/family/f216

  上記サイトの山梨県立大学人間福祉学部の西澤哲教授によれば、1~3歳の乳幼児を

 持つ母親650人の調査から虐待の心理と関連する7つの因子を明らかにしています。

  ⑴ 体罰肯定感

  ⑵ 自己の欲求の優先傾向

  ⑶ 子育てに対する自身喪失

  ⑷ 子どもからの被害の認知

  (子どもが自分をバカにした目で見たといった、子どもの存在や行動によって母親

   自身が被害を被っている認識)

  ⑸ 子育てに対する疲労・疲弊感

  ⑹ 子育てへの完璧志向性

  ⑺ 子どもに対する嫌悪感・拒否感

  西澤教授によれば「暴力はふるうまいと心に決めていながら虐待してしまう親の方

 がはるかに多い」のが実情であり、「多くの親が、苦しみもがきながら我が子に暴力

 をふるってしまっている」のだそうです。

  みんな、育児に、しつけに、子育てに悩んでいるんです。

  子育ては、大変で、疲れるし、思ったことがうまくいきません。

 「何で、うちの子は言うとおりにしてくれないの?」と思うでしょう。

  でも、それが当然なのです。

 

  子供はすでに立派な人格を持っていて、「自我」を有しています。

  子供ではなく、1人の人格者として接してみませんか?

 

6. 暴力をふるう子の心理

 ⑴ 自分を理解してほしい

   叩く、殴る、「ぶつ」といった身体的な行動に出る子供は、身体的な行動を通じ

  て、何らかのメッセージを発しているのです。

   それは、自分の立場や気持ちを理解してほしい、分かってほしいということ。

   自分の気持ちを言葉で伝えれば、それにこしたことはありません。

   しかし、言語の能力が未発達で、思考力も気持ちも整理することができない子

  が、自分の気持ちを言葉で表現することは、困難です。

   そのため、鬱積した気持ちが身体的な行動として「爆発」してしまうのです。

 ⑵ 親への抗議

   親へのメッセージとして、「自分は悪くない」「不合理だ」「納得いかない」と 

  いう意味も含まれているかもしれません。つまり、親に対する抗議の意味合いで、

  身体的な行動に出てしまうこともあります。

 ⑶ 自立したいという意思表示

   思春期や年頃の年代になれば、自分で行動し、自分で判断したいもの。

  親が小言を言ったり、子の行動を上から強制的に止めさせる(おやつが食べたくて

  買ってきたのに、「買っちゃダメ」と言って、強制的に取り上げる)ことなどが生

  じた場合には、自分の気持ちが鬱積にした形で、身体的な行動に出てしまうことも

  あります。

 ⑷ 強度な暴力やいわゆる家庭内暴力について

   ストレスやイライラする気分、とりわけ自身の無力感を、物を壊す、暴言を吐 

  く、自分より強いと思っていた親を相手に暴力を振るう、といった形で発散するこ

  とで、自分の万能感を満足させたいという心理が働いていることも考えられます。

   強いと思っていた親を殴ったり蹴ったりすることで、自分の強さを感じ、物を壊

  すことで、すっきりするなど、先を考えず、衝動的に行動することも多いです。

 

7.解決案

  人間は、自分で起こした行動で気持ちの良い思いをすると、その行動を繰り返しや

 すくなります。

  逆に、嫌な言葉や行動をされると、その人を嫌いになります。

  力ずくで言うことを従わせる、きつい言葉を浴びせることは止めませんか?

  過去に自身が親にされたこと、やられたことを子供にするのは、止めませんか?

  あなたが行ったことと同じことを子供が孫に、孫が曾孫に行うことになります。

  そのようは負の連鎖は、もうやめましょう。

  あなたが行った暴力を子供は覚えています。

  あなたが行った暴力に耐えきれず、子供は他人に暴力をふるうことで、「いじめ」

  となり、自分や人の心や体を傷つけることになりかねません。

  あなたが、疲れていることはわかります。大変なこともわかります。

  でも、子供は、まだまだ人格形成の途中です。

  1つの出来事で、トラウマになったり、人格が変わってしまうこともあるのです。

  残念ながら、暴力が起こった後では、できることが少ないのです。

 

  それよりは、日ごろから非暴力的な行動(例:説明したら納得した、ごめんねと言  

 えた、手を出さずに貸せた、など)を取れたら積極的にほめ、解決策のレパートリー

 を増やしていくことに力を注ぐ方が重要です。

  その際は、完璧でなくても、理想形でなくても、暴力的な解決でなければ、大きな

 前進ですので、褒めましょう。
  ママやパパに褒めてもらえて、叩いて解決していたときよりも褒られることの嬉し

 さを得られることで、その行動はインプットされていきます。

  「叩かないよう努力する」と一生懸命我慢するよりも、叩かない解決法を考えまし

 ょう。

   効果的に褒めるアプローチに切り替えていきましょう。

今日は、海の日

1.はじめに

  今日、7月17日は、「海の日」です。 

  海の日は、海の恩恵に感謝するとともに海洋国日本の繁栄を願う日として制定され 

 ました。

  海の日は、平成8年7月20日国民の祝日「海の日」として、制定されました。
  平成13年6月に「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律」が成立して以

 降、平成15年からは、「海の日」は、7月の 第3月曜日として、その日付が毎年変

 化することになりました。

  ちなみに、海の日は、世界にもありますが、祝日は非常に珍しいものなのです。

 

2.海の日の由来

  海の日は、昭和16年の「海の記念日」に由来するものです。

 「海の記念日」は、明治天皇が、明治9年に東北へご巡幸された際に、灯台視察船明

 治丸により横浜に安着したことが由来となっています。

 

3.海の日について

  海の日の制定には、長きにわたる海事関係団体の関係者の貢献や尽力があります。

  日本は、四方を海洋に囲まれ、海洋資源の多大な恩恵を受けてきました。その恩恵

 を忘れないよう、2017年からは、7月1日~31日を「海の月間」として制定してい

 ます。

  確かに、7月1日~31日は、海開きの時期と重なりますね。

 

4.世界の海の日

  世界にも海の日もしくは海を記念した日があります。

 ⑴ 世界海洋デー

   国際連合(国連)は、1992年にリオデジャネイロで開かれた「環境と開発に関す

  る国連会議」(通称:地球サミット)を受けて、海洋の復興および保護の促進を目

  的として、「世界海洋デー」を定めました。

   地球サミットでは、主に、フロンガスによるオゾン層破壊問題や、ジャング ル

  の森林破壊などの環境問題に関する話しが行われました。

   地球サミットの会議の中で地球環境を守っていくため「生物多様性」「国連

  気候変動枠組み条約」などが決議されました。

   それと同時にNGO組織、市民団体が声をあげる場として「グローバル・フォー

  ラム」も開催されました。

   地球環境を考えていく上で、海が果たす役割の大きさが再認識され、同時にカナ

  ダ海洋研究所が主催した「海洋の日青い地球」がきっかけとなり、「海洋の日」宣

  言がされ、世界海洋デーの制定のきっかけになりました。

   「世界海洋デー」は、2009年から正式に国連の記念日として制定され、毎年違う

  テーマで海や環境について考える日とされています。

   ちなみに、今年2023年のテーマは、「Tides are Changing(潮の流れは変わって

  いる)」でした。

   潮の流れとは、時代の空気、流れをも意味します。

   海洋プラスティック、海洋資源の乱獲、食物連鎖による化学物質の蓄積等、海の

  問題は、それを利用し、海洋生物を食する人類の問題にそのまま繋がります。

 

   世界海洋デーをきっかけに、海の問題に耳を傾けるきっかけにしたいですね。

 ⑵ カナダの海の日(「ocean day」 6月8日)

   カナダは、地球サミットで海洋の日を提唱した国でもあり、海洋資源の保護や海

  洋の復興に積極的な国です。

   カナダでは、地球サミットをきっかけに「海洋の日」(「ocean day」)が制定

  されました。

   それをきっかけに、全国各地で、海に関する講演会やダイビングイベント、ビー

  チクリーンアップなどの運動を行っています。

 ⑶ イギリスの海の日(「Ocean day」 6月8日)

   イギリスは、カナダと同様の経緯で「Ocean day」が定められました。

   イギリスでは、「Ocean Day」の目的である

  ① 海に関する見方を変えること

  ② 海に関する学習の機会を与えること

  ③ 海に関する考え方を変えること

  ④ 海の存在を祝う機会をつくること

   をコンセプトに各地で様々なイベントが開催されます。

 ⑷ オーストラリアの海の日(「ocean Care Day」 12月第1日曜日)

  「Ocean Care Day」とは「海を愛する者が、一年に一度、一緒に海洋環境の保存

  に協力する日」です。

   オーストラリアでは、海洋に関する民間ネットワーク(Marine and Coastal   Community Network)が発達しており、全国各地がネットワークで繋がっている

  ことが特徴です。

   また、イルカやクジラなどの鯨類保護にも熱心な活動を行っており、「鯨類のス

  トランディング」の先進国でもあります。

   オーストラリアでは、地域グループ、政府関係団体、企業などと一緒になって海

  洋に関する講演やイベントが行われ、海洋資源や海洋に関する啓蒙活動が行われて

  います。

 ⑸ ニュージーランドの海の日(週間) (「Sea Week」 3月)

      1987年に始まった「海洋美術コンクール」から発展したもので、「Sea Week」   

  期間中には、海洋に関する講演会・セミナー、水族館・海岸などのツアー、釣り大   

  会など様々な活動が行われます。小・中・高校では、「sea week」の期間中に海

  洋に関する授業を取り入れることが多く、生徒たちが海洋を考える機会となってい

  ます。

 ⑹ アメリカ(「National Maritime Day」 5月22日)

   アメリカの海の日は、「National Maritime Day」です。

  「National Maritime Day」は、1819年5月22日、ジョージア州で「サバンナ号」が

  蒸気推進による初の大西洋横断に成功したことに由来しています。

  「National Maritime Day」では、大統領が国民に対する声明を発表するほか、官

  公庁等での国旗掲揚を行います。

   当日のワシントンDCでは、大統領による海の日の宣言と声明の発表/殉職船員等

  の慰霊祭/海軍、海事局、プロペラクラブ等がスポンサーとなる各種の行事があ

  り、各港湾都市では、殉職船員等の慰霊祭、花輪献花式等が行われます。

3 おわりに

  海は、温暖化の影響により、世界規模で変わってきています。

  今後、海洋生物は減少していき、特に、貝類は温暖化により深刻な影響を受けると

 言われています。

  それだけではありません。海の砂漠化や海の汚染、海流の変化による気候変動、南

 極の氷山が溶けていくことで海水温の上昇も直近の問題として残されています。

  私たち1人1人では、できることは少ないですが、海の日の今日だけは、海のこと

 をことに思いをはせてみるのも一考だと思います。