連れ子と養子縁組

1.はじめに

  離婚した後、別の配偶者と再婚することがありますが、その際に問題とあるのが、子の親権に関する事柄です。

 子の親権は母親になるケースが多いのですが、連れ子に関して新夫との間で養子縁組を行うことがあります。

 今回は、連れ子と養子縁組した場合についてお伝えします。

 

2.養育費について

 養育費とは、子の生活を維持するために必要な費用であり、主に元夫が妻に支払います。

 子のある夫婦が離婚した場合、多くの場合、養育費を定めて、夫が妻に一定の金銭を支払うことになります。

 この養育費は、夫の子に対する扶養義務から生じるものです。

 

3.連れ子の場合、新夫と養子縁組する必要

 いわゆる連れ子の場合、妻と新夫との間に生じた子ではありませんので、親子関係はありません。

 また、連れ子と新夫との間には血縁関係がありませんので、「認知」もできません。

そのため、養子縁組を行うことで、戸籍上親子関係を構築することができるのです。

 

4.養子縁組と養育費について

 ①養子縁組をしない場合

 子を養育している親(妻)が再婚しても、それだけでは子を監護していない親(前夫)の養育費の支払い義務は消滅しません。

再婚しても、「新夫と子には親子関係が無い」以上、新夫には子に対する扶養義務がないからです。(親子関係を構築するため養子縁組を行うのですね。)

 そのため、極論を言えば、妻と新夫が子と同居していても、新夫は子に対して、養育費を負担しなくても良いことになっています。

 一方、親と子が別居していても親子関係は続いているので、元夫には養育費支払い義務が認められます。

 

 ②養子縁組を行った場合

 養子縁組が成立すると、養親は子の親となり、養子は養親の子となります。

 血縁がなくても法律上「親子」となり、お互いに遺産を相続する権利も発生します。

 養子縁組が成立すると、養親には養子の扶養義務が発生します。

 同居している新夫と子が養子縁組をしたら、養親である新夫が第一次的に子を扶養する義務が発生することになります。

 そのため、離れて暮らしている前夫は、その限りで養育費の負担をしなくて良いことになります。

 つまり、養子縁組をしたら基本的には元夫に養育費を請求できなくなります。

 

5.養子縁組のメリット、デメリット

①養子縁組のメリット

 もし、新夫と子が養子縁組をしないと、新夫と子は、親子関係がなく、戸籍も別になり苗字も同じになりません。あなたが新夫の戸籍に入ったら、あなたと子の戸籍が分かれてしまいます。
 また、新夫と子との間には遺産を相続する権利も発生しないので、将来新夫が死亡しても子はその遺産を相続できません。

 養子縁組をすれば、子は新夫やあなたと同じ戸籍に入りますし、将来新夫が死亡したら子はその遺産を相続することができます。

 

②養子縁組のデメリット

 いったん養子縁組をした場合、将来その相手と離婚する際に子と養親との親子関係を解消するためには、「離縁」の手続きをする必要があります。

 新夫と離婚する場合、養子縁組の解消に同意することも多いですが、離縁に同意しない場合、いつまでも離縁に関する交渉が続き、戸籍上では、いつまでも養子の関係が続いてしまいます。

 

6.再婚相手との養子縁組を元配偶者に知らせるべきか

 新夫と子を養子縁組させた場合、戸籍を取り寄せない限り、元夫は気付くことは困難ですから、養育費を払い続けるかと思われます。

 そうであれば、「元夫に知らせずに養育費をもらい続ければ良いのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、虚偽や矛盾する説明は、後に金銭的なトラブル(養育費の返還請求等)になる可能性が非常に高いです。
 そのため、後にトラブルにならないためにも、養子縁組が成立しましたら、可能な限り元夫に伝えたほうがよいと思います。

 

7.最後に

 養子縁組にすることで戸籍上の親子関係を構築できる一方、元夫からの養育費が停止された、新夫には子に対する扶養義務が生じます。

 将来を見据えて、本当に子として養育できる収入や生活基盤があるのか、生活を続けられる経済力や生活基盤、子の精神面等をしっくり検討されることをおススメします。