学校図書館とマンガ
1.はじめに
最近では、学校図書館にマンガを置く学校が増えてきました。
「マンガは、活字ではないから学校図書館には不適切だ」という考えがある一方、
「マンガでも勉強の一環として、学ぶ機会を増やす意味でも、学校図書館に置く意
義がある」という意見もあります。
今回は、学校図書館とマンガについて考えてみたいと思います。
2.学校図書館の目的
図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料等を収集し、整理し、及び
保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによって、学校の教育課程
の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成することにあります。
重要なのは、児童又は生徒の健全な教養を育成することにあります。
3.学校図書館の位置づけ
学校図書館とは、小中高学校において、図書や図書以外の資料を保存し、生徒に閲
覧するなど、学校利用者の利用に供するための施設です。
学校図書館は、学校図書館法第3条により、すべての学校(小・中・高等学校、中
等教育学校、特別支援学校)に置かなければならないものとされており、学校では、
学校図書館の設置義務があります。
1.学校図書館の位置付けと機能・役割:文部科学省 (mext.go.jp)
4.学校図書館メディア基準
学校図書館の蔵書に関しては、文部科学省から「学校メディア基準」があります。
学校メディア基準では、学校の蔵書数を最低でも15000冊と定め、学級数が増
えるにつれ、蔵書数も増えていきます。
学校図書館メディア基準では、蔵書の配分比率まで決まっています。
小学校では、
0 総記 6%
1 哲学 3%
2 歴史 16%
3 社会科学 10%
4 自然科学 16%
5 技術 6%
6 産業 5%
7 芸術 8%
8 言語 5%
9 文学 25%
文学が25%、歴史16%、自然科学16%(いずれも文部科学省管轄???)の
配分は、非常に偏った配分のように思えますが、満遍なく、広く、見識を深めるために、このような配分をしたのでしょう。
20210401学校図書館メディア基準 (j-sla.or.jp)
5.マンガの取り扱い
学校メディア基準では、「絵本、まんがは、主題をもとに、分類する。」と規定しています。
つまり、学校メディア基準では、マンガの蔵書を許容している規定になっています。
5.マンガを蔵書禁止する意見
陳情第 46 号「松江市の小中学校の図書室から「はだしのゲン」の撤去を求める
ことについて」では、「はだしのゲン」の表現の過激さが学校図書として不適切で
あり、「不良図書」とすべきであるとの採決を求める意見がありました。
報道記事によると、2012年8月、市民から「間違った歴史認識を植え付ける」と
して学校図書室から撤去を求める陳情が市議会に提出されたことに始まります。
そして、12月の本会議で全会一致で不採択となったものの、その後市教委が漫
画の内容を改めて確認した結果、「首を切ったり、女性への性的な乱暴シーンが小
中学生には過激」と判断し、その月の校長会でゲンを閉架措置とし、できるだけ貸
し出さないよう口頭で求めたとのことです。
それにより、市内の小中学校49校のうちゲンを全巻保有していた39校全てが
閉架措置を取ったとのことです。
北海道、札幌市、仙台市、東京都、千代田区、新宿区、港区、大田区、豊島区、練
このほか、仙台市議会、中野区議会、足立区議会、神奈川県議会、松江市議会、
高知市議会、鹿児島県議会でも撤去する動きがみられました。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/gakko/kyoikuiinkai/nitei_h25/ugoki/ugoki2510.html
大阪府泉佐野市の小中学校においても、一時、図書室からはだしのゲンが回収さ
れました。同作品を差別的と問題視した千代松大耕市長の意向を受けたもので、校
長会は反発したものの、市長の意向を理由に中藤辰洋教育長が撤回を拒否し、応じ
たということでした。
ここで更に問題になったのは、「閲覧記録を確認するなどして読んだ子を特定
し、個別に指導できないかと打診した」という話があったことです。
泉佐野市の上記打診は、
憲法上の個人の思想・良心の自由(憲法19条)、学問の自由(憲法23条)、
表現の自由(憲法21条)に害する非常に不適切な行為であって、「図書館の自由
に関する宣言」における「図書館は利用者の秘密を守る」という条項にも抵触する
[ 違法な行為でもあります。
個人の閲覧記録を確認するという発言自体に、憲法の理念の無理解を感じ、その
ような発言をした人間こそ、本を読んで憲法を勉強してほしいものです。
6.結論
マンガにも様々な種類・ジャンルがあり、中には、性描写等青少年には不適切なも
のもあるのも確かです。
一方で、「スラムダンク」や「ドラゴンボール」、「ドラえもん」、「ワンピー
ス」など映画化され、世界中で人気になっているマンガも多数あります。
マンガは、日本発祥の文学といっても過言ではありません。
マンガを不適切と考えるのは、マンガに対して偏った考えを持つ一部の方々(マン
ガを日常的に触れる機会がなかった「高齢者」の方)に限られるように思えます。
文部科学省は、学校図書館図書整備等5か年計画で、新聞の複数配備を打ち出して
います。
第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」:文部科学省 (mext.go.jp)
学校で、生徒が、本当に新聞を読みたいと思っているでしょうか?
これは、売り上げが落ちている新聞社の策略にすぎません。
学校の司書は、生徒が読みたいニーズ・リクエストに合った蔵書を行うべきです。
マンガも文学の一つと認め、どんどん読んで生徒に本を読む楽しさを感じてもらうことが重要のように思えますが、いかがでしょうか?
参考文献:
学校図書館における漫画の取り扱いの再検討
AA11356662_28_08.pdf
「はだしのゲン」閲覧制限問題 子供たちが学校で読む本はどうやって選ばれている? 全国学校図書館協議会の森田盛行理事長に聞く | ハフポスト NEWS (huffingtonpost.jp)
【日本人の座標軸(45)】どうしても許せない… 図書館に並ぶ漫画「はだしのゲン」(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com)