南極の所有権(領有権)について

1.はじめに

 暑い時期になりました。

 「暑さを忘れてどこかに行きたいな~」と思ったときに、真っ先に浮かぶのが「南極」でしょう。

 南極というと、通常は、「南極大陸」もしくは南極大陸にある南緯90度のいわゆる「南極点」を指していることが多いですね。

 ここで疑問に思うのですが、南極大陸には、昭和基地という日本の基地があります。

 昭和基地は、南極大陸の大陸上にある建築物です。

 この場合、南極大陸の所有権(国家の場合は「領有権」)はどうなるのでしょうか?

 

2.所有権とは・・

 所有権とは、法令の制限内で自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利をいいます。(民法206条)

 所有権という概念は、財産権はこれを侵してはならない(憲法29条1項)という憲法上の権利を具体化したもので、所有権は、絶対的な権利と言われています。

 絶対的な権利とは、誰に対しても主張することができるという意味です

 ということは、日本は、昭和基地の土地を誰にでも主張できるのでしょうか?

 

3.南極条約

 南極の領有権に関しては、南極条約により規定しています。

 南極条約は、1961年、日本を含む12カ国(他11カ国はアルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリ、フランス、ニュージーランドノルウェー、ロシア(当時ソ連)、南アフリカ、イギリス、アメリカ)により発効しました。

https://www.env.go.jp/nature/nankyoku/kankyohogo/kankyou_hogo/torikumi/index.html#nankyoku-jouyaku

 

 南極条約の主な原則は、以下の4つの原則です。

 ① 南極条約南極地域の利用を平和目的に限る

 ② 科学的調査の自由と国際協力を促進する

 ③ 南極地域における領土権主張を凍結する

 ④ 核爆発・放射性物質の処理を禁止する

このうちの

 ③ 南極地域における領土権主張を凍結する

 が今回の所有権に関する規定になります。

 

4.クレイトマンとノンクレイトマン

  当初は、南極に対して領有権があるか論争になっていました。

 イギリス、ニュージーランド、フランス、ノルウェー、オーストラリアなどのように、南極に対して領有権を主張する国家を「レイマン」と呼び、

 日本、アメリカ、ロシアといった国々は自国他国共に南極に対する領有権の主張を認めず、「ノン・クレイマン」と呼んでいました。

 強国同士の論争により、緊張した状況が続く一方で、研究者たちの間では「南極を共同研究の場にしよう」という機運が高まりました。

https://www.polewards.com/about-antarctic-treaty/

 このような状況のなかで、1957年7月1日から1958年12月31日までの18か月にわたり、南極を世界中からの研究目的となる場として研究プロジェクト(国際地球観測年(International Geophysical Year)」(通称「IGY」)を行うことになり、これが南極条約の発端になりました。

(南極は、大気汚染が少なく、人による環境汚染が少ない場所ですから、気象観測や地質調査、宇宙研究、生態系(生物環境)の研究の絶好に場所になっています。)

 

5 領有権の凍結とは・・・

 領有権の凍結とは、一時的に領有権の主張をしないというだけで、永久的に領有権を放棄したわけではありません。

 南極条約に加盟した国々は、南極を研究の場としての利用に理解し、自分の土地であるとは主張しないと約束したのです。

 

6.最後に

 ウクライナ情勢が毎日報道されている現状において、国家間での領土権の問題が未だに生じています。

 このような紛争が南極でも行われないよう、私たちは、世界各国と協調して、南極の平和利用に貢献していく必要があります。

 

 最後まで、読んで頂きありがとうございました。