料理に関する発明で、知的財産を取得できるか?

先日、行きつけのカレー屋さんで変わった料理があったので、思わず写真を撮ってしまいました。

InstagramYouTubeで料理をアップすることも日常となってきました。

 

主婦の方でも、毎日の料理からひらめいた得意料理もあるかと思います。

 

実は・・・

料理に関する発明も、特許法の条件をクリアすれば、特許になるんです。

 

その条件とは、

1.特許法上の発明であること

  (誰が作っても同じように作れること)  

  発明者以外の誰でも、同じ料理が再現できることが必要です。

  あまりにも複雑すぎる料理ですと、再現が難しく、特許が認められません。

2. 産業として実施できるもの

  特許法の目的は、産業の発展に寄与することにあります。

  そのため、産業として保護すべきものであることが必要です。

  (趣味や個人の嗜好、家庭内のみの利用ではダメなんです。)

3.新規性

 今まで誰も作ったことがないもの、知られていないものであることが必要です。

 「秘伝のタレ」は、誰も知られていないため、新規性があります。

 ただ、次の進歩性が問題になります。

4.進歩性

 発明することが容易に思いつくことができないものであることが必要です。

 誰でも思いつくような工夫では特許は認められません。

 また、ありきたりの材料を適当に組み合わせただけでは進歩性は認められません。

 

 例えば・・・

 特許4391390

① きりたんぽ 

きりたんぽを分割切断して形成した各小口たんぽの全外周面、すなわち切断面、外周面及び頂部のあるものは頂部外周面、底面をこんがり焼きに固化したきりたんぽを提供すること。

→ただの「きりたんぽ」ではなくて、小分けになっているところがミソですね。

そして、中に差し込んである串を抜くと、ちょうど3つに小分けされた「たんぽ」になります。

 

では、レシピのほうはどうでしょう?

レシピであっても、特許権は認められます。

特開平9-224617では、某カレー屋によるソースとピラフの具体的な製法が特許として公開されています。

以下、ソースとピラフの特許請求の範囲です。

【特許請求の範囲】
【請求項1】  トマトケチャップ333重量部に対して、カラメル27~40重量部、カレー粉16~24重量部、化学調味料8~13重量部、にんにくピューレ7~11重量部、およびこしょう1.5~2.5重量部を混合してなることを特徴とする調味用ソース。
【請求項2】  米飯を請求項1記載の調味用ソースとともに、マーガリンで炒めてなることを特徴とするピラフ。
【請求項3】  具として海老、タマネギ、およびマッシュルームが混合されていることを特徴とする請求項2記載のピラフ。
【請求項4】  マーガリンで海老、タマネギ、およびマッシュルームを炒め、これに米飯および請求項1記載の調味用ソースを使用量の半分量加えて炒めた後、さらに該調味用ソースの残りの半分量を加えてさらに炒め、仕上げにしょうゆを加えることを特徴とするピラフの製造方法。

 

このように、特許を得た場合、広くレシピを公開することになります。

(そのため、某飲料メーカーやフライドチキンのメーカーは、あえて特許を申請していないのです。。)

 

レシピを公開したくない・させたくない場合は、特許権ではなく、著作権や営業秘密として考える必要があります。

 

1.著作権について

著作権法で守られる著作物の定義は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています。

そのため、料理のレシピは、思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、文芸の範囲にも及ばないため、料理のレシピは著作権の定義に該当しません。

したがって、料理のレシピ自体に著作権が及ばないと考えられます。

2.営業秘密による保護

飲食店においては、レシピの公開を防ぐために「営業秘密」(不正競争防止法)として管理する必要があります。

レシピが「営業秘密」として不正競争防止法で保護されるためには、

①秘密管理性 ②有用性 ③非公知性 が求められます。

①秘密管理性とは、秘密として管理されていること」を指します。     「その情報へのアクセスが制限されていること」、「従業員などその情報にアクセスした者が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていること」の2点が求められています。

→「社外秘」「持ち出し厳禁」などの表示を行う必要があります。

 

②有用性とは、有用な営業上又は技術上の情報であること」を指します。

その情報自体が客観的に事業活動に利用されていたり、利用されることによって経営に役立っているかどうかという点が判断基準になっています

→全く売り上げが出ていないレシピならば、「営業秘密」には該当しない可能性があります。

 

③非公知性とは、その情報が「公然と知られていないこと」を指します。

インターネット上や出版物に記載された情報や特許として公開された情報には非公知性はないため、営業秘密としての保護対象にはなりません。

 

このように、料理に関する発明でも、特許権、営業秘密など知的財産を取得することは可能です。

今後、携帯電話による動画や撮影が容易に行われる時代に、

特に飲食店では、人気メニューの秘伝のレシピや秘伝のタレが外部に流出することで、そのお店の存続に大きな影響を及ぼしてしまうことがあります。

 

お店側でも、メニューのレシピや製法は、営業秘密として、権利保護の意識を高める必要があります。

情報の厳重管理、情報を流出させないための社員教育、顧客対応を徹底することが求められています。

 

今回も、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。